忍者ブログ
07 . May
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

01 . November
そして男は隊を離れ、再び北を目指した。
その背に在るのは、一振りの灯刃。

ただ独り往く回帰への長い旅路。
男は進むべき先だけを真直ぐに見据え、旅塵に汚れた軍靴を力強く踏み出す。
規則正しく拍を踏む一歩一歩が独白であり、そして己自身との対話でもあった。
思えばこの戦いの日々の全てが、そうであったのかもしれない。

再び足を踏み入れた戦場で、何を得たのか。果たしてそこに意味はあったのか。
今はまだ分からない。けれど――



「――ただ、お前に伝えたい」



戦いの喜びも、悲しみも、痛みも、すべて。
すべてが終わった今だからこそ、あの頃は頑なに押し殺していた素直さで、ありのままに伝えたい。
願いに突き動かされるその歩みを、何ものも妨げることは出来なかった。



やがて旅路は、終わりを迎える。



そこに、嘗ての少女はいた。
二人の道が別たれた、その場所に。

大きく見開かれた琥珀の双眸は、佇む女を捉えたまま時を止めた。
男はまるで再び仮面で覆ってしまったような無表情を携えたまま、ゆっくりと歩み寄る。
何を話そうか。ここに至るまでそればかりを考えていたはずなのに、自分でも可笑しくなるほどに頭の中から消え去ってしまっていた。

手を伸ばせば触れられるほどの距離で立ち止まると、男は少し照れたように顔を綻ばせた。



「ただいま」



差し出した掌にはいつかのピアス。
透き通る緋は二人を導く灯火のように、いつまでも輝き続けていた。



私たちは、時の流れに縛られることはない。
肉体という器の奥底には、記憶が生き続ける魂があるだけだから。






これは我々が語り継ぐべき、ひとつの物語。
終わりはイブラシル暦689年の冬、嘗ての終焉の地ヘステイア。
紡ぎ手は機動殲滅隊6代目総帥、『落露の氷輪』
またの名を、ロジェ・ド・ラクロ。



【Image Track 15】 Mono - Everlasting Light

拍手[1回]

PR
NAME
TITLE
TEXT COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
| HOME | 689-8 >>
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
最新記事
(11/01)
(10/15)
(06/12)
(04/21)
(02/04)
最新TB
プロフィール
HN:
落露の氷輪
HP:
性別:
男性
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
Powered by NINJA BLOG  Designed by PLP
忍者ブログ / [PR]