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19 . May
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30 . August
「――必ず返す」

そう告げて借りたままのピアスは、まだ胸元に眠っていた。
その透明さを、僅かも損なうことなく。
透き通る緋はまるで遠き日の落陽。世界に残した、想いの爪痕。
ほんの一瞬、けれど確かに重なっていた二人の軌跡はやがて別たれ、そして遠ざかった。
あの日々の記憶は、今でも胸の奥深くを掻き毟り続ける。


――再び重なることを、望むのか?


幾度、自らに問うただろう。
望めばそれは、きっと容易い。
けれど。


そして答えを出せぬまま、更なる深潭へと足を踏み入れる。
眼下には、塔の底へと連なる階段。
果て見えぬ螺旋に己を重ね、氷輪は小さく笑った。


然らば、闇の中へ。


ぐるぐると、ぐるぐると。





【Image Track 09】 Mono - Silent Flight, Sleeping Dawn

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07 . August
イブラシル大陸に血管のごとく張り巡らされた街道は、まさに交易という名の血流を大陸中に送ることでその成長を支えてきた。
その中でも太い動脈のように大陸の東西と南北を走る2本の街道が果たしてきた役割は大きい。

ヘステイア高地。

それは、その2本の街道が交差する地。
緑の草原がどこまでも広がるこの丘陵地帯は、その穏やかな見た目とは裏腹に軍事的要地として古くから幾多の熾烈な戦いの舞台となっていた。


――そしてまた、この地で戦いが一つ。

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24 . July
「黒」を冠する塔。
その頂は月無き夜に溶かされて、全てを窺い知ることは叶わなかった。
しかし、ここから見上げる者は否応無く気付かされるであろう。
そこに住まう、確かな魔の存在を。

地下深くへと連なる長い長い螺旋を紡ぐ、果ての知れぬ階段。
石造りのそれは、一段ごとに乾いた靴音を響かせる。
その乱れぬ律に耳を預けたまま、氷輪は嘗て読んだ物語を思い出す。
それは歴史の彼方、神話に生きる人々が天を目指して塔を建てたという物語。
ならばこの深潭へと降りる螺旋は、誰が何を目指したのであろうか。


――或いは、人ならざる者の所為であろうか





【Image Track 08】 Mogwai - Friend of the Night

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