長い長い時間を掛けて手紙を読み終えると、男はそれを丁寧に封筒に戻してテーブルの上へと置いた。
肺腑から絞り出すように深く息を吐きながら、腰掛けていた椅子にその身体を預ける。高さの及ばぬ背凭れでは支えきれない頸から先が宙に投げ出され垂れ下がる様はどこか艶めかしい。
木と木は互いに噛み合い、去りゆく光と訪れる闇の精霊達が未だ混在する空間に鈍い鳴き声をぎしりと響かせる。
境界線が曖昧になった天井に暫し目的もなく視線を滑らせると、やがてゆっくり目蓋を閉じる。
風がひとすじ迷い込み、過ぎていった。
その目蓋が再び開かれたのは辺りが悉く闇の精霊の支配下に置かれた頃。そして男は夜を見据える。
手放す痛みは知っている。逃避という微温湯の、心地良さも。
けれど心は衝き動かされる。消炭のように己の奥深くに眠っていた何かが再び燃え上がる、熱量に。
男は、立ち上がった。
あの激しさの中に、再び身を投じるために。
【Image Track 01】 65daysofstatic - Retreat! Retreat!
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