6月の降り止まぬ雨はまるで、鎖のようだった。
春が、大地を繋ぎ止めるための、鎖。
けれど夏を求める大地は抗う。やがて鎖は、断ち切られるだろう。
氷輪は今日も、空を仰ぐ。
雨粒が仮面を叩き続ける小さく軽い音の連なりが、不思議と心を落ち着かせた。
この地で時が途切れたのは5年前の春が終わる頃。そして今、時は再び動き出そうとしている。
全てを隠す仮面の下、雨音にかき消されてしまうほど小さく、氷輪は呟く。
ただいま。
そして氷輪は足を踏み出す。力強く、前へと。
戦いを始めよう。忘れられた名を、世界に示すため。
雨音が途絶える。
夏が、始まろうとしていた。
【Image Track 07】 Mouse on the Keys - Forgotten Children
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