雪はもう、この高地から去っていた。
長い長い冬を雪下で過ごした草原はその色を失ったまま風の精霊に小さく乾いたざわめきを返す。
見上げる空は未だ厚い鈍色の雲に覆われたままで、そこから新しい季節を感じ取ることは難しい。
暦は5月。春は、とうに訪れているはずだった。
男は独り、この地に留まり戦い続けていた。
ひとつ、またひとつ命を断つ。途絶えた時を、繋げようとするように。
広大な草原の真中で幾つ目かの命を断った時、男は己に近付く足音を聞いた。それは騒々しい、けれどどこか暖かい響き。
ゆっくりと振り返るその先に見えたのは5人の人影と、途切れた雲の隙間から差す、光。
それは新しい季節の訪れだった。
これは我々が語り継ぐべき、ひとつの物語。
始まりはイブラシル暦684年の春、嘗ての終焉の地ヘステイア。
紡ぎ手は機動殲滅隊6代目総帥、『落露の氷輪』
【Image Track 06】 Sgt. - すばらしき光
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