3月の雪はこの大陸から過ぎ去ろうとする季節に縋るように、未だ厳しい寒さが残るこの高地に降り続けていた。
それはひそやかに、しめやかに。
漆黒の外套に重なる純白の層は、時が経つにつれ少しずつその厚みを増していく。
男の歩みは、止まったままだった。
穢れ無き白に包まれた世界は、男に残る戦場の記憶とはあまりにもかけ離れていた。
この純粋な世界のどこかに、君はいるのだろうか?
無意識に仰いだ雪降る空に吸い込まれそうで、男は仮面の奥の眼差を僅かに細めた。
雪の下、戻らぬ過去を想う。
【Image Track 05】 Mono - Are You There?
[2回]
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