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07 . April
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24 . May
灌木の隙間を縫うように続く道は、2月の雪に覆われていた。
手にした地図と、遺された記憶を辿るように男は歩く。足跡ひとつ残っていない、真っ白な道を。
拍動に比例するように次第に早まる歩みは、いつしか駆けるように前を求めていた。
やがて潅木の茂みが途切れる。突如開けた視界。
広がる純白の海を前に、男は歩みを止めた。


ヘステイア。彼らの、終焉の地。


ゆっくりと、足を踏み入れる。
一歩ごとに残る足跡と、蘇っていく喪失の記憶。

ここで彼らは戦い、そして散った。
手にしたものは、全て失った。
何よりも大切な、ものまでも。

果て見えぬ海を彷徨い続けた男は、やがてその膝を雪面に着けた。


仮面を伝う、ひとつぶの雫。
それは葉から零れる露のように、落ちた。





【Image Track 04】 Mono - "Follow The Map"

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20 . May
濁った水音が規則正しく拍子を踏む。旅は大陸有数の湿地帯を南北に貫く、泥濘だらけの街道に至っていた。

街での滞在中、男が新たな得物として選んだのは無骨な鉄の塊であった。
形状こそ剣のそれに近いものの、そこに刃は存在しない。これから先に課せられる戦場での蛮用を、数打ち物の刃程度が耐え得る筈もないことを男は知っている。
優美さの欠片も見出すことのできない形状は、男の好むところとは程遠い。それでもその確かな重みに相応しいだけの信頼感と、それを振るう事への期待感を覚えずにはいられなかった。
戦場から離れた時間に大した意味などはなかったのだなと、男はその仮面の下に小さな苦笑いを隠した。

背後で不意に、羽音が激しく響く。
男が振り仰ぐと、視界には獲物――男を狙い上空から襲い掛かる巨鳥の姿が映った。
飛来する巨鳥は瞬く間に獲物と定めた男への距離を詰めると、勢いそのままに巨大かつ強靭な翼を空間ごと薙ぎ払うように叩き付ける。
振り仰ぐ動作のまま身体を強襲者に向けた男は僅かに背を丸めるように腰を落とすと、泥濘など微塵も気にならぬような軽やかさでひとつ地を蹴り身体を後方へと跳躍させる。獲物を叩き潰すために繰り出された凶翼は自らが巻き起こす暴風で男の外套をばさばさと孕ませ、その跳躍に恩恵を与えたに過ぎなかった。
ふわりと地に着いた男の脚は一拍、ぐんと力を籠めると次の跳躍のための蹴り足となった。ただし、今度は前へ。
先ほどの軽やかさとは打って変わって力強さと鋭さを増した跳躍は巨鳥に劣らぬ俊敏さで距離を詰め、低く、深く懐へと滑り入る。
男の手が、腰に伸びた。そして跳ね上げられる刃引きの重剣と、舞い散る羽毛。
――違う
手応えは、目指すものに及ばない。痛みに激昂する巨鳥から突き下される嘴を円楯でいなすと、無防備になった頭部に更なる一撃を叩き付ける。
――まだ、足りない
もっと力強く、鋭く。求めるのは、この潰された刃ですら鉄をも断つような、斬撃。
両脚幅をやや広めに地を踏み締めると、男は己の上半身を弛緩させた。だらりと垂れる、頭。
幾拍かの静寂の後、男の全ての筋肉が躍動した。



濁った水音と共に、軍靴が遠ざかる。
残されたのは泥濘に横たわる巨鳥の躯。そして別たれた、首。





【Image Track 03】 夢中夢 - 斬鉄

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11 . May
北を目指し、軍靴が往く。

その一対が鳴らし続ける響きに狂いはなく、それでいてその主からは狂気を感じさせずにはいられない。
歩き、歩き、屠り、そしてまた歩く。その愚直ともいえる繰り返しはまるで何かを取り戻すようであり、何かを置き去るようでもあった。

たったひとりの行進は、自らに留まることを許さない。
風走る平原、光惑う森林、雲渡る山道、時澱む要塞。街道を北に向うにつれ、季節は少しずつ冬の輪郭を明瞭にしていく。
そして水の精霊がその年初めての六花を空に舞わせた日、男はロデの街の門をくぐった。
しかしそれは休息ではなく、更なる先へと進むため。


目指す地は、近付きつつあった。





【Image Track 02】 sgt. - Paranoia

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