「黒」を冠する塔。
その頂は月無き夜に溶かされて、全てを窺い知ることは叶わなかった。
しかし、ここから見上げる者は否応無く気付かされるであろう。
そこに住まう、確かな魔の存在を。
地下深くへと連なる長い長い螺旋を紡ぐ、果ての知れぬ階段。
石造りのそれは、一段ごとに乾いた靴音を響かせる。
その乱れぬ律に耳を預けたまま、氷輪は嘗て読んだ物語を思い出す。
それは歴史の彼方、神話に生きる人々が天を目指して塔を建てたという物語。
ならばこの深潭へと降りる螺旋は、誰が何を目指したのであろうか。
――或いは、人ならざる者の所為であろうか
【Image Track 08】 Mogwai - Friend of the Night
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