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04 . December
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16 . June
雪はもう、この高地から去っていた。
長い長い冬を雪下で過ごした草原はその色を失ったまま風の精霊に小さく乾いたざわめきを返す。
見上げる空は未だ厚い鈍色の雲に覆われたままで、そこから新しい季節を感じ取ることは難しい。
暦は5月。春は、とうに訪れているはずだった。

男は独り、この地に留まり戦い続けていた。
ひとつ、またひとつ命を断つ。途絶えた時を、繋げようとするように。
広大な草原の真中で幾つ目かの命を断った時、男は己に近付く足音を聞いた。それは騒々しい、けれどどこか暖かい響き。
ゆっくりと振り返るその先に見えたのは5人の人影と、途切れた雲の隙間から差す、光。
それは新しい季節の訪れだった。



これは我々が語り継ぐべき、ひとつの物語。
始まりはイブラシル暦684年の春、嘗ての終焉の地ヘステイア。
紡ぎ手は機動殲滅隊6代目総帥、『落露の氷輪』





【Image Track 06】 Sgt. - すばらしき光

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04 . June
3月の雪はこの大陸から過ぎ去ろうとする季節に縋るように、未だ厳しい寒さが残るこの高地に降り続けていた。
それはひそやかに、しめやかに。
漆黒の外套に重なる純白の層は、時が経つにつれ少しずつその厚みを増していく。
男の歩みは、止まったままだった。

穢れ無き白に包まれた世界は、男に残る戦場の記憶とはあまりにもかけ離れていた。


この純粋な世界のどこかに、君はいるのだろうか?


無意識に仰いだ雪降る空に吸い込まれそうで、男は仮面の奥の眼差を僅かに細めた。




雪の下、戻らぬ過去を想う。





【Image Track 05】 Mono - Are You There?

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24 . May
灌木の隙間を縫うように続く道は、2月の雪に覆われていた。
手にした地図と、遺された記憶を辿るように男は歩く。足跡ひとつ残っていない、真っ白な道を。
拍動に比例するように次第に早まる歩みは、いつしか駆けるように前を求めていた。
やがて潅木の茂みが途切れる。突如開けた視界。
広がる純白の海を前に、男は歩みを止めた。


ヘステイア。彼らの、終焉の地。


ゆっくりと、足を踏み入れる。
一歩ごとに残る足跡と、蘇っていく喪失の記憶。

ここで彼らは戦い、そして散った。
手にしたものは、全て失った。
何よりも大切な、ものまでも。

果て見えぬ海を彷徨い続けた男は、やがてその膝を雪面に着けた。


仮面を伝う、ひとつぶの雫。
それは葉から零れる露のように、落ちた。





【Image Track 04】 Mono - "Follow The Map"

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